« 科学論文 | トップページ | プロ野球観戦 »

科学論文に関すること。。。投稿から出版

STAP問題の質疑応答を見ていて、質問者もわかっていないのだな、と思ったのは科学論文の投稿から、出版までのプロセス。ある質問者は投稿からreviceを経てacceptに至りそこから後、という流れがわかっていなかったので科学者である理研の人たちと話が噛み合っていなかった。

雑誌によって異なる部分が多々あるのだが、私の知る限りの通常の標準的なケースで説明してみる。

まず、研究者は論文をまとめる。本文を書き、図表を作る。共同研究などで複数の著者で書く場合、話し合いながら、それぞれの分担する範囲を決めて作製を進めます。投稿しようとする雑誌の投稿規定を見て、そのフォーマットに合うように書きます。責任著者あるいは筆頭著者が最終のとりまとめをして出来上がると、共著者全員に投稿用の原稿を回し、チェックして問題なければ投稿します。現在の学術誌はオンラインと浮こうシステムが用いられていて、ウェブ上から投稿します。その後の通信は電子メールで行われます。

かつては、査読用のコピーもそろえて郵送で送り、通信が全て現物の郵送だった時代はかなり時間がかかりました。ファックスが普及すると査読の結果が国際ファックスで送られてきましたが受信トラブルが発生すると面倒でした。インターネットの進歩で時間短縮が進みと地理的な不利も無くなりました。

投稿する時は所属機関は通常何も関与しません。研究者が自らの責任で投稿します。投稿された論文は編集者により査読者の選定と依頼が行われます。投稿された内容の論文を評価できそうな実績を持った人が査読に選ばれます。投稿者は誰が査読したかを知る事はできません。投稿時に競争相手に査読が回らないように指定する事もできる事が多いです。雑誌によっては、査読者を投稿者が推薦できますが、その人を選ぶか否かは編集者の権限です。査読者は依頼を受けると数週間以内に査読結果を返さなくてはなりません(この作業は通常ボランティアです)。査読者が返す内容は、まず、この論文は掲載に値するかしないを、そのままの掲載してよい(acceptable)、文章など細かいところの修正が必要(acceptable with minor revision)、追加の実験をしてそのデータを加えれば掲載可能(acceptable with major revision)、掲載すべきでない(reject)、の基本的には4通りのどれかの答えを編集者に返し、編集者から投稿者に査読の結果が伝えられます。そのまま通れば即出版の手続きに進みますが、そのような事は稀です。投稿者は査読者の指摘に従って原稿を修正し、または、追加の実験を行いその内容を加えて論文を修正し、改訂版を再投稿します。もし、査読者の意見が的外れだったり、実行不可能な実験が要求であれば、その意見を添えて出します。通常、このreviceには期限が設けられていて、3-4ヶ月以内の修正して改訂版の再投稿が要求されます。実験が難航した時など、お願いすれば期限の延長が認められる事もあります。修正した部分に不備があれば、再度修正を要求される事もあります。複数の査読者で意見が異なると編集者の責任で判断が下されたり、査読者を増やして判断が行われる事があります。

改訂版は再度査読者のチェックを受け、査読者が納得すると編集者が掲載可(accept)を出します。一旦acceptが出ると、もう、スペルミスなどの些細な部分以外は変更ができなくなります。この後は出版に向けた事務的な書類のやりとり、ゲラのチェック、校正と進み、最終的に出版されます。acceptされた時点で著者は業績として(in press [印刷中]という表示で)示す事ができるようになります。時々、かさ上げしようとして執筆中(in preparation)とか投稿中(submitting)という論文を業績リストに入れる事もあるんだが、これらは、いつどこに出版されるかもわからないので通常業績評価の対象外になります。

大きな研究費をもらっていて、アピールの必要な人とか、特別アピールしたいすばらしい業績が出た時は、所属機関に申告してプレスリリースが行われます。このような時には事前に所属機関が論文が出る事を把握するのですが、論文の投稿作業に所属機関は通常タッチしません。うちでは年度末に業績の申告を要求され、そこで上げて、所属機関は出版状況を知る事になります。

かつては、出版プロセスのスピードが雑誌によって大きく違っていたので、競争の激しい分野では競争相手が投稿したと聞くと早く審査の進む雑誌に後追いで投稿するという話も聞きました。また、査読が競争相手に回り、時間をかけて査読され、難癖を付けられ、そのうちに追いつかれたという話もよくありました。そういった部分は今のシステムでは随分改善されています。しかし、ボランティアで、限られた時間で査読をするので、本文とデータの整合性を検証する事はできても、不正までの検証は普通の査読者にはできません。なので、論文の不正の告発などは草の根の活動に頼っている訳です。まともなトレーニングを受けた研究者はデタラメはやらないので、全ての論文を誰かが不正チェックを細かくするのは、これまではそれにかかるコストとして見合うものにならないと思います。今回のような大騒ぎが頻発するようであれば必要になってくるのかもしれませんが、私個人の考えとしては、大多数の科学者の良心を信じたいところで、たまに出てくるおかしな人にスタンダードを合わせるような事になってもらいたくは無いです。

« 科学論文 | トップページ | プロ野球観戦 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 科学論文 | トップページ | プロ野球観戦 »

Jubai 1-1