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科学論文

マスコミは理系のことわかっていない人たちが多く、はくしをん分を核とか学術論文を書くとかわかってなくて報道していたり、コメントしている人が結構トンチンカンな事をTVなどでしゃべっているので、簡単な説明。

科学論文ってどんなもの?


ニュースなどで、欧米科学誌、NatureやScienceに発表された、と聞く論文てどんなものでしょう。


大学や研究機関などでの研究成果は論文としてまとめられて、学術誌(Scientific Journal、科学者は「ジャーナル」とよく言いますが)と言われる【雑誌】に投稿され、掲載されます。基本的には(本来の在り方としては)、得られた結果を広くみんなに知ってもらって、科学、人類の進歩に役立ててもらうために公表するものです。それぞれの国の言葉で書かれるものもありますが、現在は国際的に評価されるためには英語で書かれます(以前は、受け付ける言語が複数ある雑誌もありました。日本で国内向けのものでは日本語で書かれるものもあります)。


学術論文はどのような書式で書かれているのでしょう?


私のいる生命科学分野(他の分野では微妙に違く事があるかもしれませんが基本的に同じだと思います)の論文の典型的な例について書いてみます。

まず、論文のタイトル、著者とその所属機関や連絡先が書かれています。実験材料の分譲を請求する時などにこの情報は重要です。通常は最初に名前が乗っている人が筆頭著者(First Author)で、論文の実験などを主に行った人になります。あとは、研究への貢献度によって順番に名前が並びます。同等の貢献だという時は、そのような注釈が付いたりします。最後の方は研究室の主宰者、研究室の責任者に当たる人が来る場合が多いです。研究室の責任者自ら実験をして、筆頭著者で論文を書く場合以外は「ボス」が最後になるのが普通です。責任著者(Corresponding Author)がそれに当たります。最後の人に責任著者のしるしがついている場合が多いですが、複数の研究室の共同研究で責任著者が複数だったり、筆頭著者が責任著者を兼ねる場合があります。


論文本体の最初は要約【Abstract】で、論文の内容の要約が書かれています。単語数は雑誌によって制限が異なりますがこの文の長さは大体英単語200語前後のことが多いようです。目次でタイトルを見て興味があった場合、この部分を読んでさらに本文を読みたいか、判断しています。

この後が本文になります。本文は通常、序論【Introduction】、材料と方法【Materials and Methods】、結果【Results】、考察【Discussion】に分かれています。古典的には、この並びですが、最近は材料と方法が最後になるものが増えています。また、Results & Discussionとして、結果と考察が一体になっている場合もあります。


序論には、この論文を理解するための前提となる事柄がまとめられています。過去の研究を引用しながら、この論文以前に何がわかっていたのか、明らかにしなければならないどんな課題があったのかを、多少遠い分野の人でも理解できるようにこれまでの論文を多数引用しながら書かれています。最後の節には、そこまでで書かれてきたことを踏まえて、この論文でどんな実験を行い、得られた結果とその意味が簡単にまとめられているのが普通です。


材料と方法では、この論文で使った実験手法について書かれます。実験材料や試薬、実験手順等が読んだ研究者が自分の研究のために同じ実験をしたいと思ったらできるように、記載します。紙面の限られる雑誌では、しばしば詳細が省略されすぎて困ることがありますが、精神としては同じ実験ができるように書きます。


結果では実際に行われた実験とその結果と意味するところが記載されています。ここと考察が論文のメインの記述になります。


考察では得られた結果を基に考えられることが述べられます。ここでは、多少の予想などが含まれることもあり、今後の課題なども議論されることになります。ただ、あまりに妄想を膨らませすぎると、やりすぎ(over discussion)として根拠を示さないとダメ、と書き直しを要求されます。


顕微鏡写真やグラフ、数値の表といったデータは図(figure)表(Table)として表示され、本文で必要に応じて参照されます。図には独立して図の説明文【Figure legend】が付きます。製本された段階では、本文で触れられる文章の近くに図が来るように段組みされますが、離れてしまうこともあります(そういう時は読みづらいんですが)。


本文の後には、謝辞【Acknowledgement】として、著者には入っていないけれど研究を助けてもらった人への感謝、研究費をもらった、政府機関や財団などへの感謝が表示されます。


本文中で参照した論文や本などのリストが【References】としてリストされ、過去の研究など、遡って知識を得ることができるようにしてあります。参照はきちんとするのがマナーです。自分の結果のみで議論したり、序論を書いたりはできないので色々な人の結果をあっちこっちから引っ張ってきて書くことになるし、方法も元を示して細かいことを書かない方が楽なので、長い論文は引用も多くなりますが、短い形式を指定している雑誌では数を制限される場合があり、この場合は取捨選択に頭を悩ますことになります。


最近は著者が複数いる場合の研究における役割分担が明記されたり、利益相反に関する記述があったりするばあいもあります。また、インターネット上で公開されるようになってから、紙面の制限で本体では載せられなかった実験データや詳細な実験方法をSupplimental materialsとして、インターネット上からアクセスできるようにして必要な人には研究のより細かい情報が伝えられるようになっています。


それぞれの項目の呼び方が多少雑誌によって異なることもありますが、基本的にこのような構成になっています。


査読(peer review)ってなんなのか

学術論文は投稿すれば載せてもらえるというものではありません。雑誌側も自分の雑誌に載せる価値がある論文か、論文をチェックします。そのチェックシステムが査読になります。学術論文はEditor(編集者)に学者が名前を連ねています。このうちの誰かが投稿された論文を取扱い、通常複数(2-3人)のその分野の研究者に査読を依頼します。依頼を受けて承諾した人はreviewer(査読者)として出版前の原稿を読み、ダメ出しを行います。それに従って掲載可か、不採択か、の判断がなされますが、一番多いのは何らかの修正あるいは追加の実験を要求されること(revise)です。修正、追加実験のデータの追加を経て査読者のダメ出しに対応して、掲載可の判断がされるとacceptされて、出版に向けてのプロセスに進みます。基本的には、このプロセスは、論文の掲載・不掲載の選別の機能の他に投稿時の不完全な部分を直し、より良い論文として出版可能にするという機能を持つとされていて、学術論文誌では広く採用されているシステムです。負の側面としては、競争相手や大御所に査読が回り、意地の悪いコメントを付けられ落とされたり、余計で過大な追加実験を要求したりわざとゆっくり査読したりして時間を稼ぎ、同じ内容の論文を先にあるいは同時に出されてしまった、という話は良く聞きます。最近はそのようなことが避けられるように、査読の時間も短く区切られることが多いですし、この人に査読を頼むのは止めてくれ、という要求も投稿時にできるようになっていることが多いです。また、出版された論文に、最初に原稿を受け付けた日付と最終的に掲載が決定された日付の両方が記載されるようになっていて、先手権争いに配慮しています。


余談

学術論文は研究成果を人類共通の資産とするためもあり、世界で評価されつためには、今は研究者が国籍に関わらず理解することができる言語として英語で書かれます。非英語圏の研究者にとっては母国語でないので我々も含めてみんな苦労します。ひどい英語となるのを避けるため投稿時に英文校正を受けることを雑誌側も薦めていますし、実際構成のみならず、翻訳サービスもお金さえ払えば利用可能です。学術論文でまず大切なのは研究成果で、格調高い文学的な文章であることは要求されませんが、読みにくい文章では論文が採択されないという結果を生みがちです。

また、欧米文化圏の人は序論や考察の中で向こうの共通の教養としてギリシャ神話などからの話をネタに文章が書かれている場合があります。日本人の私には、なんじゃこれ、なんですが、欧米人同士の間では受けがいいようです。中国の故事に因んだり、日本の古典文学に因んだりした話を差し込んでも受けないと思いますが。

科学的な真実の記載、という側面が強いので、文章は似たようなものが並ぶ場合があります。材料と方法などは、言ってみれば実験マニュアルの文章なので、定型文の連発です。序論も、その研究の意義を語る文は同じ研究室からの論文を並べるとおなじみのフレーズ、というものが見出せたりします。そういった部分の創造性は要りませんが、科学的真実として明らかにされたことの新しさは要求されます。競争に負けて、準備していたものと同じものが出されてしまったー、となると対応策は、ランクの下がる雑誌に急いで出す、同じ解析でも何か自分たちが違うデータがないか探してそこが新しいとして出す、さらに先の実験をやって上を行く研究として出すために頑張る、と、苦しい対応を迫られます。


博士論文ってどんなもの?


博士の学位申請時に提出される論文です。大学院の博士後期課程修了時に学位認定のために提出され、学位認定のための審査に使われます。学部の卒業論文、大学院博士前期課程(修士課程)の修士論文と異なり、博士論文は製本して2部を提出し各大学の図書館と国会図書館に送られ、閲覧することが可能なものとなります。最近はリポジトリにより、大学の図書館などから一部ネット上に公開されているものもあります。一方、卒論、修論は大学により扱いは異なるかもしれませんが、学内的に扱われるもので、一部大学の図書館に収蔵されて公開される場合もありますが、卒業の審査に使われた後は、特にどこかに保管されなくてはならないものとはなっていないので、扱いが大きく異なります。


文系・理系、各大学院の研究科、学科、下手すれば指導教員によって指導される細かい書式の違いはあるかもしれません。私の受けた指導の場合は学術論文の拡大版を書く形です。人によっては、学術書、の形式をとる場合もあります。審査のされ方、審査基準も大学によって、研究科、専攻によって異なっています。

博士論文は、基本的には大学院在籍中に行った研究について記述されています。大学院において行った研究を示して、博士の学位に十分な内容の研究を行い、それを論文の形にまとめて公表する能力があることを示すためのものです(口頭で発表する能力は別に学位公聴会で、発表と質疑応答を行って審査されることになります)。従って、内容については既に学術論文に掲載されたもの、今後投稿に使う内容なども含まれていることが多いです。言語は日本語の場合も英語の場合もあります。薄くなると格好悪いし、サボっていたと思われたくないので、学術誌への掲載論文では省いたような細かいデータや実験手順も丁寧に書き、期待外れに終わった実験についても全て漏れなく書くことも多いです。学術論文の書きかたに準ずるので、要約、序論、材料と方法、結果、考察、参考文献、謝辞、図表、図表の説明といった項目が並びます。複数の異なったテーマの研究を行った場合は章を分けて書く場合もあります。

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